姉川左岸土地改良区 沿革


昭和34年7月27日 : 姉川下流部左岸地区土地改良区設立準備委員会発足総会

昭和37年8月11日 : 姉川下流部左岸土地改良区設立(滋耕第196号認)

昭和53年7月28日 : 地区の拡大により姉川左岸土地改良区と改名


 

 我が国の戦国史に残る姉川合戦の絵巻を繰拡げた、由緒あるこの地域は本県北部でも有数の排水不良地で、これが本地域の農業振興を阻む最たる原因とされていました。

  この流域集落は、古来より再三にわたる浸水被害に悩み、また、近代になっても大きな台風の被害を受けて近代的農業経営の前提となる土地改良の必要性が痛切な問題となり、昭和29年に大井川を中心とした推進計画が樹立されました。その後、神照地区を一丸とする推進母体に土地改良区設立準備委員会が設けられて広く要請運動が繰り広げられ、これが、早期着手の足がかりとなりました。この間、県当局においても本事業の重要性を認めていただき、当時、農林省の技官から参議員議員となられた尾木又蔵議員の現地調査を受けるなど国県挙げて必要性を認めていただき、県営事業として異例とも言われた環境整備事業を兼ねた排水事業推進に向けて昭和33年~昭和35年に亘り計画立案の運びとなりました。

 その後、関係集落と幾回となく協議懇談を重ね、昭和36年度県営かんがい排水事業として国の採択を受け、昭和37年8月11日姉川下流左岸土地改良区が設立されました。昭和39年度より大井川祇園町・相撲町地先より工事に着手し、この間、約14年の歳月を経て昭和51年度に県営排水改良事業の完成を見ました。さらに、昭和47年度より団体営かんがい排水事業中村川地区に着手し、引き続き昭和53年度より同じく団体営かんがい排水事業での北出川地区及び鬼川地区の着手、昭和58年度完了をいたしました。この間の事業推進には、関係集落24集落の協力を得て、総事業費17億3千2百万円・総延長21.1㎞となりました。(昭和53年7月28日地区拡大により姉川左岸土地改良区と改名)

 一方田用水についても太古以来、伊吹山系から湧き出る姉川の水、恵みの水により米作りが栄てきましたが、過去の数々にわたる姉川のはんらんや度重なる農民の水争いは目を覆うものがあったと伝えられ、文明11年は(1479年)には悲惨な出来事が起こったと伝えられています。これは世に言う文明の上坂・三田村水争い合戦で約600人の死者が出て時の室町幕府にも聞こえ、これによって龍ヶ鼻郷里取水権が確定、安定したと地元に伝わる文献に記されています。その後も水争いは近世にもおよび、我々の祖先が地と涙で戦力争いを繰り返しながら姉川からの取水確保がなされてきたとされています。 

  その後近世になって、各集落において少しでも用水不足を解消するために昭和38年度から各地で用水源を地下水に求めて、さく井による湧水方式の小規模かんぱい事業や干害応急対策事業により、管内で26個所において施工され一帯の田用水が満たされました。このように姉川の河川水・地下水を水源にしてかんがいされてきた用水ですが、水源が不安定で取水施設も老朽化し用水不足をきたしたり、琵琶湖総合開発事業による湖水位の低下と全域にわたるほ場整備事業の実施による用水量の増大に対処するため、新たに琵琶湖を水源とする用水改良事業を実施。用水不足の解消を図るため、昭和54年度から着手し、平成元年より1号分水工から10号分水工掛かりの範囲に通水を行こないました。順次、ほ場整備事業と併せて施工され、平成8年度に県営かんがい排水事業が完了いたしました。この間の、総事業費は、74億2千4百35万3千円・総延長23.2㎞となりました。  

  ほ場整備事業においては、団体営ほ場整備事業びわ東地区細江工区より、昭和53年度から着手し、団体営10地区14工区、県営地区3地区14工区、平成12年度に団体営東上坂地区が最後に完了いたしました。この間の、総事業費84億9千2百万円・団体営ほ場整備事業面積は、446.0ha・県営ほ場整備事業面積は、419.2ha・田総面積843.9ha(総筆数4163)・畑総面積21.3ha(総筆数771)道路総延長70.5km・用水路(パイプライン)総延長128.8㎞・排水路総延長97.3km・暗渠排水総面積162haの施工を行いました。

 

 こうした揚水事業の管理体制の強化として平成4年に水管理システムが設置されましたが、年々施設の老朽化によりトラブルが発生する状況にみまわれたため、平成16年度から、新農業水利システム保全対策事業により、新たな水管理システムを導入するために、5年間計画的な分水量操作や供給主導型の送配水操作を可能とする水管理システムについての、技術的検討及び調査を行いました。続いて、平成18年度より、新農業水利システム保全整備事業により、新たな水管理システムの施設更新を順次行い、平成22年度に完成し、この間の、総事業費は3億1千2百58万5千円で施工されました。

 この新たな水管理システムは、各分水工のほ場の一番高い箇所へ安定して水が出る圧力(2次圧)を、特に各揚水時期による末端2次圧を事前に調査を行い、末端適正2次圧を決めて各分水工において、自動圧力制御により運用をしています。このシステムのメリットは、以前とは違い各分水工の末端パイプラインに大きな負担をかけずに、その分安定供給ができることから節水にも繋がっています。

 

 平成6年度においては、農地流動化支援水利用調整事業(先進型)を、初年度全国10地区の一つとして採択を受けましたが、この事業は、農地の流動化・利用集積を円滑に進めるために、水利用調整や水管理といった水の観点から利用集積を図り、規模拡大を進め、益々多様化する水需要に対応するため農業水利および施設管理といった面から検討を加え、具体的な再編構想を検討するソフト事業について、7年間取り組むことで地図情報システムの構築も図りました。

 これらの事業執行に対応するため、土地改良区事務所を昭和51年に新築し、ピーク時には職員19名が在職。これらの大事業完成のため、国や県並びに市の大きなご支援・ご協力と、地元の地権者ならびに各ほ場整備委員会の役員各位のご尽力・ご協力を得て、農業基盤作りの大事業が成し遂げられて現在に至っています。その語りつくせないご苦労に対し深く感謝と敬意を表するところです。

 

 これらの事業で造成された膨大な施設の維持管理だけにとどまることなく、各種ソフト事業に積極的に取り組み土地改良区運営の安定化を図り、平成25年度より農業水利施設の計画的な保全更新を行うために、アセットマネジメント中長期計画に基づき取り組んでいくことが必要とされ、平成29年度から現在、県営かんがい排水事業(農業水利施設保全合理化事業)により、老朽化した特別高圧受電設備および揚水機場(建屋)、分水工場内施設等の改修・保全対策を行うことで、合理的な用水供給と管理の省力化を図り、農業生産性の向上および農業経営の安定に努めています。

 今後も、これら農業水利施設の維持管理等を計画的に取り組んでいくことが必要とされ重要な課題であります。